黒木和雄『とべない沈黙』(1966)
(100分・35mm・白黒)黒木の初の劇映画は、昆虫好きの少年だった松川八洲雄の原案から、北海道にいないはずの蝶を追いかける少年をめぐる型破りなロードムービーとなった。川喜多かしこの計らいでフランスでも上映され、当時のシネマテークの館長アンリ・ラングロワも絶賛したという。スタッフの大半は記録映画の経験しかなかったが、本作で鮮烈な画面を生み出した鈴木達夫は、以降新世代の監督たちに支持されてゆく。
’66(日本映画新社=東宝)(脚)松川八洲雄、岩佐壽彌、黒木和雄(撮)鈴木達夫(美)山下宏(音)松村禎三(出)加賀まりこ、平中実、小沢昭一、戸浦六宏、山茶花究、木村俊恵、長門裕之、蜷川幸雄、五月美沙、益富信隆、笠井一彦、成瀬昌彦、小松方正、渡辺文雄、田中邦衛
鈴木達夫のキャメラワークに尽きる。全体としてこれほど回りくどい、場当たり的な筋立ての映画もないだろうが(前衛!)、それでも感動して見入ってしまうシーンがいくつもあった。加賀まり子も素晴らしいし、少年が蝶を捕まえるシーンは、観て損はないシーンだ。