黒木和雄『椅子を探す男』(1968)

(11分・16mm・カラー)ギター弾きの男が座っていた椅子がなぜか消滅してしまい、男はその椅子を求めて街や海辺を探し回る。コマ落としなども用いた遊び心のある短篇で、ポランスキーの『タンスと二人の男』(1958年)なども想起させる。黒木監督が所蔵していたプリントを特別に上映。
’68(科学映画製作所)(製)並木菊雄(脚)黒木和雄、保田宗晴(撮)大津幸四郎(美)平田逸郎(録)加藤一郎(出)松岡きっこ、植田峻

躁鬱の気配が濃厚な男と謎の母性的存在、松岡きっこが登場。こういうのけっこう好き。海辺で叫びだす男の気持ちが分かってしまう。
ところで黒木和雄『私の戦争時代』(岩波ジュニア新書)に次のような面白い叙述がある。「原田芳雄というと、アウトロー、ワイルド、ハードボイルドといった骨太のイメージがあります。確かにそれは原田さんの大きな魅力の一つではありますが、彼は決して独りよがりの役者ではありません。原田さんは心のどこかに自分はダメな人間なのだと思っているふしがあり、同じような劣等感を抱えている私も共感したのでした」(186)。戦争体験はないけれど、よく分かる。