読んだ本

ウソっぽいネタも含めて、面白い話がいっぱいある。ブレトンウッズ体制下の「埋め込まれた自由主義」では資本の本源的蓄積がうまくいっていたが、1960年代には固定相場制に限界が生じ、先進国はスタグフレーションに見舞われた*1。1970年代はオイルショックもあって支配階級の資本蓄積は大きく目減りすることになった。アメリカの金利上昇はラテンアメリカ諸国などの債務国の財政を破綻させ、IMF介入による「小さい政府」化が進められたが、そのことは開発独裁的な傀儡国家を生むことになった。そんなこんなで、世界システム的な規模で新自由主義の政治的フォーマットが、多様かつ緊密に形成されるようになった。みたいな話(適当)。
支配階級の回復過程として、1970年代後半からの新自由主義化をとらえる著者だが、第1章でそれを傍証するためのグラフがたくさん紹介されていて、かなり楽しめる。1970年代のアメリカ共和党の内部で、自由主義を目指す財界とアファーマティブアクションへの反発を強めたキリスト教右派とが結びついたという話は興味深かった。
日本の場合は、微妙ですね。橋本行政改革で行政的には「小さな政府」が目指されたんだろうけど、新自由主義なんてやったら不況を後押しするだけだったし、そもそも福祉国家の限界は1970年代後半よりずっと後になってようやく自覚されはじめたんだし。そもそも日本では1970年代後半に資本蓄積の悪化がそこまで深刻にはならなかった。それは村上泰亮『新中間大衆の時代』でも指摘されていたように、石油危機後も日本は円安であったため、国際競争力を維持できたことも一因だったんだろう(素人判断)。

新自由主義―その歴史的展開と現在

新自由主義―その歴史的展開と現在

*1:ここらへんのリアリティーがあまりよく分からない。良い参考文献はないですかね?