黒木和雄『キューバの恋人』(1969)

フィルムセンター。

(98分・35mm・白黒)キューバに寄港した日本の軟派な漁船員と、ゲリラに志願した現地の女性兵士とのすれ違う感情を描いたラブ・ストーリー。『とべない沈黙』がキューバで好評だったことから、両国初の合作には黒木が指名され、土本典昭の苦難のプロデュースの末に完成した。革命から10年を迎えたキューバの記録として、黒木の優れたドキュメンタリー性も発揮された。
’69(黒木プロ=ICAIC)(監)(脚)黒木和雄(脚)阿部博久、加藤一郎(撮)鈴木達夫(音)松村禎三(出)津川雅彦、ジュリー・プラセンシア、グロリア・リー、アルマンド・ウルバッチ、フランシスコ・カスティセーノ、ニコラス・ギリエン、ジャン・クロド、フィデル・カストロ首相

革命後のキューバを訪れた津川雅彦が革命闘士の女性に恋をする。鈴木達夫キャメラで捉えられたキューバの情景が非常に美しい。女性も美しい。女性は自身を犠牲にしても革命的理想に殉じなければならない。恋などしている余裕はないのだ。
思っていたよりもずっと秀作だったのは、カストロ首相の演説などのキューバの社会的現実が、ドキュメンタリータッチで写実的に描写されているからだ。これはきわめて貴重な映像だ。