藤田敏八『エロスは甘き香り』(1973)

公開:1973年 監督:藤田敏八
主演:伊佐山ひろ子桃井かおり、川村真樹、高橋長英山谷初男、五條博、谷本一、橘田良江
デザイナーの悦子、自称フリーカメラマンの浩一、ホステスの雪絵、劇画家志望の昭。4人は四畳半で共同生活を送るようになる。やがて楽しき時は過ぎ、ヒモ同然の男たちが繰り返す悲しき賭博ごっこ。根無し草の若者たちの焦燥感、閉塞感を密室での生活を通して淡々と描く。桃井かおりがヌードシーンを大胆に演じている。助監督に『太陽を盗んだ男』の長谷川和彦が参加。


桃井かおりのヌードと来たら、見に行かないわけにはいかない。非常に繊細で自己感傷的な青春映画だった。『TOMORROW』で光る演技を見せていた伊佐山ひろ子も好演。
顔の表情がしばしばアップされる。その表情がみんな素晴らしい(特に桃井かおりは最高)。青春時代の不条理感、持て余したエネルギーを不器用にぶつけ合う様が「ああ、そういえばそんなだったよな」と不思議な感興をもたらした。
今の私は、何か問題があっても、何が問題であるかが理解できるから、怖れや鬱屈や過剰な攻撃性がないまぜになった訳の分からない焦燥感からは無縁の人になってしまった。いつのまにか、何かが終わっていた、ということか?