田中登『実録阿部定』(1975)

公開:1975年 監督:田中登
主演:宮下順子江角英明、坂本長利、橘田良江、千草蘭、大谷木洋子、水木京一、五條博、小泉郁之助、久松洪介、庄司三郎、花柳幻舟
時は昭和11年。社会を震撼させた、あの安部定事件を完全映画化。血文字で書かれた「定、吉二人キリ」など随所に田中登の美学が冴えわたり、生と死の間で狂い咲く、男女の情念を濃密に描いた日活ロマンポルノ屈指の名作。二・二・六事件も単なる風景に変えてしまうような、密室での情事に耽る二人を「四畳半襖の裏張り」シリーズ以来の名コンビである宮下順子江角英明が熱演。

宮下順子が素晴らしい。エロかわいい。
随分昔に大島渚愛のコリーダ』(2000年バージョン?)を観たが、あっちの方が格調は高い。金のかかり方が違うから(男優が藤竜也だから、というのもある)。しかしこちらもなかなかの見ごたえだった。秀作。
アナーキーな表現のために血や死体などの猟奇的要素を使うのは、個人的にはめちゃめちゃ苦手だが、苦もなく観られる人もいるだろうし、宮下順子の力演だけでも観る価値は十分。あんなにずっとセックスしてたらチンポコがふやけてしまうだろう。むせかえるような密室の澱んだ空気感、という点に関しては、大島作品の方が優れていたが、定の欲望がフェティッシュなものへと変質していく奇妙なリアリティーは、本作品の方が優れているように感じる。