フランソワ・トリュフォー『大人は判ってくれない』(1959)

公開:1959年 監督:フランソワ・トリュフォー 主演:ジャン=ピエール・レオー、クレール・モーリエアルベール・レミー、ギー・ドコンブル、パトリック・オーフェー、ジョルジュ・フラマン、イヴォンヌ・クローディー
トリュフォーの分身的存在であるアントワーヌ・ドワネルを、まだ少年のレオーが演じた、ドワネルものの第一作。ナイーヴで孤独な14歳の不良少年ドワネルの眼に映る、家庭、学校、街。「ふりかえらない、笑わない」波打ち際へと駆けてゆく少年鑑別所を脱走した彼の表情が忘れがたい印象を残す、傑作処女長編作。

トリュフォーの自伝的作品。子供が大人の都合に振り回されて味わう不条理、だがそれを「不条理」と突き放して見なすことも出来ない純粋さと痛々しさ。トリュフォーは子供時代、母親から物音を立てないように言われ、息をひそめて過ごしていたのだそうだ。途中、グリム兄弟の人形劇に興奮する可愛らしい幼児が映し出されていたが、森の物語もトリュフォーにとってはトラウマだったという。両親が山登りに行っている間、森の中で一夜を待たされ続けた経験があるらしい。親の愛を求めながらも得られず、不良になってみるものの、少年鑑別所へと向かう護送車のなかでは自然と涙が頬を伝う。映画と小説(バルザック)と悪友が救い。
子供の視線から見えるエッフェル塔をはじめ、パリの風景も美しい。ただちょっと長いかな?丁寧には描いているんだけど、90分くらいに収めて欲しい。