成瀬巳喜男『女の中にいる他人』(1966)

(102分・35mm・白黒)人妻が不倫中に絞め殺された事件をめぐって関係者たちの様々な感情が渦巻く。妻の殺害に驚愕する夫を三橋達也が演じ、黒澤・成瀬作品など東宝の名作の多くに印象的な演技を残した名バイプレーヤー中北千枝子も出演している。白黒反転画像の挿入など、福沢康道のキャメラが他の成瀬作品と異なる趣を加えた。
’66(東宝)(撮)福沢康道(出)三橋達也(杉本隆吉)、藤木悠(黒岩)、中北千枝子(千代子)(監)成瀬巳喜男(原)エドワード・アタイヤ(脚)井手俊郎(美)中古智(音)林光(出)小林桂樹新珠三千代草笛光子若林映子長岡輝子加東大介、十朱久雄、稲葉義男、関千恵子

フィルムセンター。新珠三千代の印象がぜんぜん違う。
パーツのクオリティーはさすがに高いが、話全体としてそう成功しているとは思えない。ひょんなことから殺人を犯してしまった夫とその妻、さらにその友人で被害者の夫である男(三橋達也)。秘密を共有した夫婦に対する姑の無遠慮な会話などは、成瀬ならではの真骨頂。夫が気を病んだり不穏な会話が交わされたりする場面で決まったように雨が降ったり、地面が濡れたりする趣向なども面白い(温泉地で夫から打ち明け話をされるときのトンネルの地面、そのときの新珠の表情!)。しかし夫があまりに気弱で優柔不断なのが、ちょっとモタモタした感じを与えている。