並木鏡太郎『花嫁吸血魔』(1960)

公開:1960年 監督:並木鏡太郎 主演:池内淳子、天草博子、瀬戸麗子、三田泰子、矢代京子、寺島達夫高宮敬二、五月藤江
秘術によって甦った復讐の権化と化した女が、結婚初夜の花嫁たちを襲う!映画のヒロインに抜擢された藤子は仲間たちに逆恨みされ、崖から突き落とされてしまう。そして決して治ることのない傷を負い…。一度女優を引退した池内淳子に仕掛けられた、大蔵貢の呪いのような怪作。

京橋から渋谷へ移動。ひさびさのシネマヴェーラ。「何故池内淳子はこうなったか」と言いたい気分になったが、面白かった。『花影』の池内は忘れられない美しさだったが、カルト映画でも美しいものは美しい。太めの声なのに時々裏返るところが可愛い。
女の嫉妬が招いた藤子(池内)の悲運。母は自殺し、遺言には「曾祖母を訪ねよ」と残されていた。曾祖母は蝙蝠の生き血で精力を保っている陰陽師の末裔。池内が訪ねると、怪我を負った池内の顔に蝙蝠の屍骸をあてがう。曾祖母は死を以て、池内に「恨みをはらせ」と怨念を授ける。「こうもり人間」になった池内は、恋や仕事の嫉妬で自分を陥れた女たちを次々に殺害していき…。
都市型アノミー前近代的共同体における呪術性でふっとばす、というストーリーは、いまだに現代人の眠った記憶に訴えるものがありますなぁ〜。息もつかせぬ展開で非常に見事だった。