古田博司『新しい神の国』

昨日は古田博司『新しい神の国』(ちくま新書)を読み終えたのだが、これはかなりおすすめ。重要な問題提起がなされていると思う。
丸山眞男は田舎者ぎらいで、知識人的な背伸びした生き方を軽蔑する町人を否定していた。しかし著者によれば、西洋社会を絶対的なモノサシとして、モノサシの方に日本の現実をむりやり当てはめてしまう知識人の思考法こそ、日本の東アジア認識を決定的に歪めてきた当のものに他ならない。
東アジアを理解するには、特有の親族構造(宗族)への理解が欠かせない。冷静な理解のうえに、冷静な東アジア認識を築いて行かなければならないのである。
抽象的な観念図式から出発するのではなく、リアルな現実認識のためには、丸山の否定する「茶化し」根性こそが生かされるべきだとする、著者の「日本人論」に深く納得。左翼批判はかなりイタイ所を突いていると思う。

新しい神の国 (ちくま新書)

新しい神の国 (ちくま新書)