著者はアメリカの真正保守。超気まぐれ読書。
西欧社会と日本は少子化を迎え、滅亡の危機にある。社会の衰亡の背景にはフェミニズムなどの文化相対主義があり、これはリベラル勢力による、伝統主義・キリスト教倫理の破壊の成功を意味している。その歴史的淵源はマルクス主義者の文化左翼的転回に見出せるもので、グラムシルカーチに始まり、フランクフルト学派アメリカ社会に与えた影響も見逃せない。
キリスト教倫理を絶対化したら、マルクス主義はやっぱりこう見えるよな」と興味深かった*1。教育問題については、ブルームなどとも共通した保守主義的見解が見受けられたが、ブルームはレオ・シュトラウスの弟子でネオコンではなかったか?と思われるのに対し(知識が曖昧)、ブキャナンはネオコンではなくて、孤立主義にコミットする非軍事覇権主義者である*2。中絶問題への苛立ち方は、アメリカの保守のある種の典型を示している可能性があると感じた。

病むアメリカ、滅びゆく西洋

病むアメリカ、滅びゆく西洋

*1:人間の思考を歴史化してしまうマルクス主義の否定的インパクトを連綿と見出す彼らの粘着性のうちに、キリスト教徒にとってのマルクス主義への忌避感の大きさを実感できる。

*2:北朝鮮の六者協議をめぐるアメリカ国内の情勢変化を指摘する宮崎テッチャンはこの点に着目しているのだと思われる。たぶん。