勁草から出た『不安定雇用という虚像』は前にざっと読んだが、新聞の書評欄を見ていたら高橋伸彰氏が「非正規雇用者の就業形態への満足度が高い事情にはウラがあるのでは(大意)」*1と指摘していた。たしかに正規雇用者に賃金以上の労働負担を加えることで、非正規雇用者の相対的な満足感を引き出すことは明らかに企業の利益となる。この可能性は検証されなくてはならないだろう。統計を見ていると、非正規雇用が増加傾向を保っていることは明瞭だが、長時間労働者の割合(の歴史的変化)・その実態などについて詳しく知りたいものだ。
今日はメモを取りながら論文を読んでいたのだが、自分の煮詰まり状態が正面から自覚され、苦しくて仕方がなかった。前から気付いていることだが、やはり辛い。乗り越えられるのだろうか、という前に、乗り越える必要があるのか、という疑問も浮かぶが、とりあえず「あの本を読めば突破口があるかもしれない」と思いついた本があったのでこれから検討してみようと思う。
帰り道、ふた駅前で降りて、古本屋で森銑三『傳記文學 初雁』(講談社学術文庫)を550円で購入。崎門学派について書かれた部分があって、面白そう。そのあと何も考えずに歩いて帰ろうとしたら、道に迷って1時間半くらい彷徨う羽目になった。

*1:引用しておくと次のとおり。「急増を続ける非正社員は自らの仕事をどのように考えているのか。首都圏でパートやフリーター、派遣などの呼称で就業する6000人の意識調査を分析した本書の著者は、主婦パートの8割以上が、また派遣の4人に3人が現在の勤務先や働き方に満足しているほか、フリーターが抱く「『正社員』と比較した」給与面の不満も相対的に低いなどの事例を挙げて、多くの非正社員は現在の仕事に満足しているという。/確かに、残業や転勤を拒否できない正社員よりも、「自分のライフスタイルにあった」働き方を選択できる非正社員のほうが給与は低くても望ましいと思う人は多いかもしれない。しかし、不安定雇用だから非正社員は望ましくないという通念が「虚像」なら、正社員は雇用が安定しているから望ましいという見方も「虚像」である。そこには給与差以上に過大なノルマを課して正社員の働き方を魅力ないものに貶(おとし)め、非正社員へと誘導する企業の深慮遠謀が見え隠れしているからだ。」(朝日新聞16日)