「激流中国5年1組 小皇帝の涙」

「一人っ子」政策を実施してきた中国。以来、一人っ子家庭で、親が子を過保護に育てる、いわゆる「小皇帝」問題が指摘されて久しい。こうした親の過剰な期待、教育ブームの過熱ぶりがおさまることはない。しかしそれが子供たちに重い負担となり、心に暗い陰を落としているというシンクタンクの報告が行われ、中国政府も、学力偏重主義に警告を鳴らし始めた。/今回はこうした教育をめぐる問題を取り上げる。/番組の舞台は南部、雲南省。人口500万の省都昆明の公立小学校5年生のクラスである。貧富の格差拡大、大学生の就職戦線の厳しさの中で、親たちの“よりいい学校へ進学させたい”という学歴崇拝は高まるばかり。1年生から英語を学び、数学は世界で一番難しいといわれるほどの学習レベル、小学校の現場は親の頃とは全く違う。親は子供を叱咤激励し、愛の鞭も惜しまない。学校側も成績のいい子供を多く輩出すれば、評価が上がるため、教育に力を入れる。学校を支配する“成績至上主義”、しかし「それでいいのか?」と葛藤する子供たちが、悩みや苦しみを訴え始めた。番組は、こうした現場を記録。親子それぞれの心のうちに迫る。

それにしても中国は一体どうなっているのか?成長段階にある経済状況の下で学歴熱が過熱化することは一般的現象だとは考えられるが、そうだとしても限界を超えた異常事態である。大学間序列が決定的であることは指摘されていたものの、中学や高校の実態を調査したうえで、学歴熱のクールダウンのプロセスも解明してもらいたい。非行などの逸脱現象は見られるのだろうか。
いずれにしても、子供の懸命の訴えに「親も職場で点数を付けられているのだ」と答えた保護者がいたように、中国社会におけるライフスタイルの多様性が著しく損なわれており、「勝ち組」「負け組」といった人生観の序列が進んでいる所に、親の焦りが加速しているのだと思われる。言うまでもなく「一人っ子」という条件も大きいわけだが。現在でさえ大学生の就職率が7割で焦燥感が広がっているのだとしたら、北京オリンピックが終わって景気が後退したら、どうなっちゃうんだろうか、中国。