マキノ雅弘『日本大俠客』(1966)

(95分・35mm・カラー)明治期に実在した大侠客・吉田磯吉の若き日々を描いた作品で、地元の北九州で長期ロケがおこなわれた。藤純子が演じた鉄火肌の芸者・お竜は、『緋牡丹博徒』シリーズ(1968-71年)のヒロイン・矢野竜子へと発展する。惚れた磯吉(鶴田)の裏切りを知ったお竜(藤)が料亭の階段で酔いつぶれ、涙ながらに刃を向けるシーンが素晴らしい。
'66(東映)(脚)笠原和夫(撮)山岸長樹(美)鈴木孝俊(音)菊池俊輔(出)鶴田浩二藤純子大木実、天津敏、品川隆二、岡田英次木暮実千代徳大寺伸河野秋武、三島ゆり子

傑作。日清戦争後の北九州が舞台。斬り合いは殆ど描かれず、藤純子鶴田浩二の叶わぬ恋(三角関係)が中心になっている。
薄墨の闇のなかで藤と鶴田が三年後の出会いを約束しあうシーンが素晴らしい。藤の日本髪の向こう側にぼんやり港の灯りがともる。三年後、藤は料亭の階段で酔いつぶれる。「あんたは女を一人殺したのよ」。恨み、怒りを抑えきれない女の業が胸に迫る。
殴り込みの前の「ここに居たら殺されるのよ」というセリフも切ないが、とにかく藤純子が素晴らしい。そりゃ惚れるよなという鶴田浩二の男ぶりも見事。マキノはすごい。