花沢健吾『ルサンチマン』

花沢健吾ルサンチマン』(小学館)は秀逸なエロマンガだった。が、設定を十分に生かしきれていない。
可愛い女の子に取り囲まれ、自分の容貌も自在のフィクション世界が実世界に侵食してくるわけだが、その限界状況において「リアル」がどういう意味を持ちうるのか、もうちょっと突っ込んでみてほしかった。これが興味深い問いでありうるのは、リアルとフィクションの二分法は実は誤りで、人間にとってリアルなものはフィクショナルな性質を常に持つからである。「ゲーム上の世界」に着目したまではよかったが、意味世界がそもそもフィクショナルであるという普遍的な次元で物語を構築したらもっと深みを増したはず。要するに「もてないオタクにとって二次元とは何であり、三次元とは何なのか?」という問いに正面から取り組んでほしかった。