内田吐夢『血槍富士』(1955)

主演:片岡千恵蔵、島田照夫、月形龍之介、喜多川千鶴、田代百合子 (ニュープリント)
中国抑留から帰還した内田吐夢が、伊藤、小津、清水、溝口の協力を得て13年ぶりにメガホンを握った復帰第一作。若様の槍持ちとして東海道を旅する権八は、気立てはいいが酒乱の気がある。……「海ゆかば」の編曲が流れるペシミスティックなラスト・カットが心を揺すぶる、必見の名作! (シネマヴェーラ

腹を壊した子供が野糞をしまくり、野辺の風流の殿様連中にまで臭いがプーンと漂ったり、盗賊が開き直って刃を振り回している所に、メクラが無暗に突入したり、ユーモラスなハチャメチャ具合が面白い。身売りする娘が助かって、これで一件落着、と思いきや、ラストでよもやの大立ち回りが始まる。酒蔵から酒が噴き出るなか、片岡千恵蔵の槍遣いがどえらい迫力。
最初の船着場から川を渡るシーン、権八が河原で子供たちを見守るシーンで水面が写るのだが、これがとても尋常な雰囲気ではない。雨が降って道がぬかるむ映像も素晴らしい。片岡千恵蔵の殺陣で『下郎の首』のラストを思い出した。