レオンティーネ・ザガン『制服の処女』(1931)

MÄDCHEN IN UNIFORM (89分・35mm・白黒)1933年2月日本公開。女学校の寄宿舎を舞台に、プロシア式の権威主義的な教育制度を痛烈に批判したドイツ映画で、演出家マックス・ラインハルトのもとで演劇を学んだザガンは、当時は珍しい女性監督のひとり。1932年に初めて渡欧した川喜多かしこが自ら選定した作品としても知られている。
’31(ドイツ)(監)レオンティーネ・ザガン(脚)クリスタ・ヴィンスロー、F・D・アンダム(撮)ライマール・クンツェ、フランツ・ヴァイマイル(美)フリッツ・マウリシャト、フリードリヒ・ヴィンクラー(音)ハンソン・ミルデ=マイスナー(出)ドロテア・ヴィーク、ヘルタ・ティーレ、エレン・シュヴァンネッケ、エミリア・ウンダ

双葉十三郎『愛をめぐる洋画 ぼくの500本』(文春新書)によると、「映画史に輝くドイツ映画代表作の一つ」。「…二十世紀初頭、帝政時代のドイツ。上流階級の寄宿制女学校に母を失ったマヌエラ(ヘルタ・ティーレ)が入学、優しく美しいベルンブルグ先生(ドロテア・ウイーク)に母の面影を見、憧れを超えた思いをつのらせるお話で、冷酷な規律に苦しめられる多感な少女たちの生態が折目正しい演出で描かれる。クライマックス、マヌエラの投身未遂をきっかけに、生徒たちだけでなくベルンブルグ先生までが校長に抵抗する態度を示し、校長が去っていく終局が、圧倒的な感動を読んだ。…」(163−164)
学校、警察、病院など、規律的な場所を背景にした物語を見ると「ああ、戦前ドイツ映画だな」と思わされるのは、偏見か。とはいえ、厳しい規律生活のなかでも、女生徒たちは適度に悪事を働きながら、生き生きと生活しており、好ましく感じられる。ラストシーンを含め、螺旋階段がうまく使われていた。『ドン・カルロ』の盛り上がりも良い。