イングマール・ベルイマン『第七の封印』(1957)

DETS JUNDE INSEGLET (97分・35mm・白黒)1963年11月日本公開(ATG共同配給)。中世ヨーロッパが舞台。十字軍の遠征で心底疲弊したアントニウスは、迎えにやってきた死神と、わが身の生死をかけてチェスに挑む。上品なユーモアもまじえながら、死の神秘と、生の喜びを美しく描き上げた本作は、1957年のカンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した。
’57(スウェーデン)(監)(脚)イングマール・ベルイマン(撮)グンナー・フィッシャー(美)P・A・ルンドグレン(音)エリック・ノルドグレン(出)マックス・フォン・シドー、グンナー・ビョルンストランド、ビビ・アンデルソン、ニルス・ポッペ、ベント・エーケロート、オーケ・フリーデル、グンネル・リンドブロム

波打つ暗い海辺で、死神と騎士が不気味な会話をするシーンから映画が始まる。私のトラウマであるソクーロフ『ストーン』系の危険を感じたが、陽気な旅芸人一座などが出てきて、そういう感じでもなかった。むしろウェーバー『魔弾の射手』の雰囲気に近いと思う。深い森を横切って、嵐と雷に見舞われ、不気味に死神が現れるシーンなど。
とはいえ、疫病、ヨハネ黙示録、盗賊、十字軍など、日本人にはよく理解できない設定がいろいろあって、ロマン派的な作品とも単純には言えなさそうだ。死神が怖いが、旅芸人の素朴で陽気な夫婦、二人の間に生まれた幼児(ミカエル)なども魅力的で、旅芸人の一人が陥る三角関係にもマヌケな面白さを感じる。それだけに兵士アントニウスと従者、死神らが交わす神学的論議がいっそう謎めいている。「映画に登場した最高の死神」(双葉十三郎、161)。