熊澤尚人『虹の女神』(2006)

主演:市原隼人上野樹里蒼井優酒井若菜相田翔子小日向文世佐々木蔵之介鈴木亜美
映像制作会社に就職した智也の元に、大学の映像研究会で一緒に自主映画を撮っていたあおいが死んだとの知らせが届く。映画監督を目指していたあおいは、留学先のアメリカで事故にあったのだ。告別式の日、大学時代の仲間は自分たちが作った映画の上映会を開き、智也はふとしたきっかけで、あおいの自分に対する気持ちを知るのだった。岩井俊二の自身の作品以外での初プロデュース作。女子中高生に圧倒的人気の桜井亜美が原案、脚本に参加している。

死にオチが再構成され、上野樹里が死ぬところから物語が始まる(冒頭章では情報のみが示される)。5章立ての構成だが、上野樹里市原隼人が過ごす映画サークル時代(中盤)がすばらしい。青春映画として、明らかに岩井俊二ワールドが生み出されている(わずかにゆっくりと揺れる画面)*1
ともかく、上野樹里がとんでもなくかわいらしい。ボーイッシュな魅力で、蒼井優との組み合わせも豪華きわまりない(浴衣姿の祭りの場面)。ラストで上映される「自主映画(「地球最後の日々」)」も完成度が高く、「死んだ上野樹里が撮ったのか」と考えると、ケータイ小説で号泣する女子高生はもはや他者とは思われない。
「男の子っぽい美少女が片思いに悩む」という少女マンガ的定型も切なさ満点で、市原の煮え切らない告白に上野が取り乱すシーンがすばらしい。市原が号泣し、その横で蒼井が涙を流すシーンも忘れがたく、酒井若菜相田翔子の脇役陣もなかなか良かった。

*1:この作品や岩井作品を振りかえると、青春時代というのは、それ自体で固有の世界観を形成しており、そこを緩やかに脱しつつある時期にいたって、ようやくその固有の味わいをかみしめることができるのではないか、と思われてくる。それは大人のものではないが、只中にいる若者にとっても「認識の対象」とはならないのだから(なぜなら只中にいるのだから)、十分に若者自身のものではない。もちろん大人にとってそれが安直なノスタルジーに堕する危険は大いにあるとしても。