岩井俊二『Undo』(1994)

主演:山口智子豊川悦司田口トモロヲ
強迫性緊縛症にかかった妻と、彼女を助けようとする夫の苦悩を描いた作品。夫の仕事が多忙で孤独に苛まれる妻は、ある日自ら手を縛っている自分に気付く。その症状はしだいに悪化し、身の回りのすべてのものを紐で縛りはじめた妻は、やがて自分も縛ってほしいと夫に求め・・・。 雑誌に掲載されたフォト・ストーリーをもとに作られたこの中編映画は、美しい映像と緊迫感に満ちた演技は口コミで評判となった。

90年代の病理ってトレンディードラマにも反映されてるよなって、今にして思うわけだが、『ずっとあなたが好きだった』の<冬彦さん>もそういえば愛の不可能性を体現する存在だったのではないか、ただのヘンタイじゃなくて、と思う。
シングル女性が自立し、恋愛を謳歌するようになったのは良いことだが、自由恋愛というのは、人間関係のきずなを固めるものとしてよりは、明らかに不確実性(偶有性)を増すものとして存在する。「恋愛を純粋化すればするほど恋愛から見放される」という機制は、90年代の病理現象の進展と何らかの並行をなしていたのではないか?
主演は山口智子豊川悦司は「僕たちは結局、縛られていたのか?ほどけていたのか?」とつぶやく(恋愛のパラドックス)。縄師が大活躍(しているはず)。