マキノ雅弘『劔雲鳴門しぶき 『阿波の踊子』改題短縮版』(1941)

(71分・35mm・白黒)1931年に未完成で終わったという“阿波踊り映画”にマキノが再度挑んだ作品で、阿波踊りの本場・徳島でロケを敢行した。悪家老によって無実の罪に陥れられた廻船問屋の次男が、海賊となって復讐する物語。主役の長谷川一夫ら俳優陣が、地元の踊子たちを従えて壮大な阿波踊りを繰り広げるラストシーンは圧巻。
'41(東宝)(原)(脚)觀世光太(山上伊太郎)(撮)伊藤武夫、立花幹也(美)北村(音)飯田信夫(出)長谷川一夫入江たか子高峰秀子、黒川彌太郎、月田一郎、清水金一清川虹子、澤村貞子、鳥羽陽之助、汐見洋

娘時代の高峰秀子は輝いている。原節子と共演した『阿片戦争』の高峰は最高に可愛らしかったが、この作品もとても良くて、長谷川一夫が宿に逗留し、「おまえさんがこのくらい小さい時分に、えらやっちゃえらやっちゃって・・・」と阿波踊りを踊ってみせるのを、反芻するように繰り返すシーンが、最高にキュートだった。
七年ぶりに復讐に訪れた長谷川一夫のもとに、兄が幽霊となって姿を現したのには、吃驚した。朽ちた屋敷のセットも寂しく恐ろしげ。仮面を付けた浪人達に刃を突きつけられながら、カタキの家老は阿波踊りの渦中に巻き込まれ、古屋敷の門の下で死ぬ。直接的な暴力ではなく、祭りが生むエネルギーの高揚によって敵が討たれるという設定が、いかにもマキノらしい。