『すべての経済はバブルに通じる』

某氏が推奨していたので読んでみたところ、たしかにすごい本だった。元証券アナリストの友人に話を聞くと、「やっぱりファンダメンタルズを評価するのが基本(大意)」と言っていたのだが、金融資本主義の自己増殖本能はファンダメンタルズとは無関係の経済現象を生み出しており、その主たる要因には「資本と頭脳の分離」による「リスクテイクバブル」の常態化がある。産業資本主義から金融資本主義への転換という流れは1870年代から存在したが、金融恐慌を経た戦後、それは再度活況を呈し、冷戦崩壊後には新興国市場バブルを惹起(アジア通貨危機)、また金融工学を導入したLTCM等のヘッジファンドの拡大は、レバレッジを極端に効かせた超不安定な収益構造(ハイリスク・ハイリターン)を市場に内在化させた。レバレッジを効かせているぶん負のスパイラルは必然的に破綻を招くわけで、「資本と頭脳の分離」構造を前提とする「壮大なる合成の誤謬」こそ、サブプライムショックの本質なのだと理解できる。前半はサブプライム問題の復習として読めるが、後半の株価チャートに基づく投資家心理の描写は、ほとんど福本伸行の傑作漫画『カイジ』に匹敵する(笑)。ラストで実体経済の再評価について言及されている。
話題書なので、ここで推奨するのもお節介だろうけど、まあ読んでおいた方が身のため。

すべての経済はバブルに通じる (光文社新書 363)

すべての経済はバブルに通じる (光文社新書 363)