内田吐夢『浪花の恋の物語』(1959)

内田吐夢『浪花の恋の物語』(1959)を鑑賞。萬屋錦之介有馬稲子片岡千恵蔵進藤英太郎 千秋実 東野英治郎 田中絹代。うぶな商家のボンボン(萬屋)が花魁(有馬)に入れ込み、破滅していく。『吉原百人斬り』のような不穏な雰囲気が最初から漂っているが、こちらの方が作りがスマートで良い。欲望で何も目に入らなくなる人間の業は、封印破りをする萬屋の異常な表情に極まっているが、それを客観的に観察する近松門左衛門(片岡)を配したことで、作品全体に落ち着きが与えられている。有馬稲子が小姓の傷の手当てをする、母性の表現が素晴らしい。