梅田で郵便屋K、役人K、自営業Gと新年会。利権色の濃い郵便事業の労働実態を聞いていると、Kには悪いが、ここにはメスが入れられねばなるまいと思う。それに仕事の仕方から考えて、こうした単純作業に接近する労働分野では、十分にワークシェアリングが可能だろう。役人Kも主張していたが、世界的景気減速をふまえて、労働分配率を上げ、なおかつ貯蓄性向の低い低所得者層に安定した収入・生活を確保させることは、内需拡大の方向性とも合致して、いまや必須の政治的課題といえる(社会の分断化に伴う社会的コストの問題もある)。雇用法制の再構築が急務である。
ただし今の派遣切りは、『すべての経済はバブルに通じる』でも指摘されていたような、「産業資本主義から金融資本主義へ」というマクロ動向を前提としたものである。労働者優先(産業資本主義)ではなく、株主優先(金融資本主義)の経営モデルにおいては、不況に際して「リストラ」に積極的であることが、株価を支える条件となり、企業の内部留保の蓄積にもかかわらず、派遣切りがなされている現状には、こうした構造的な背景要因が存在している。
というような話を、せっかく元証券アナリストのGがいるのだからしてみたわけだが、その際、須田慎一郎『金融資産は今すぐ現金化せよ 新・投信バブルは崩壊する!』(ベスト新書)と勝間和代お金は銀行に預けるな!』(光文社新書)を引き合いにだしてみたら、なかなか話が盛り上がって良かった。両者とも好著であるが、題名がまったく正反対なところが、面白い。勝間和代は金融リテラシーをわかりやすく述べていてデキル感じだが、その前提である「リスクの分散投資と金融資産の長期保有に心がければ、資産形成にとって統計的に必ず有利」という主張が、須田本において、ここ18年の日本の株価実績をもとに否定されている。もっとも須田が金融商品による資産形成を全否定しているわけではなく、これは「金融資本主義」というスキーム自体が、曲がり角であるだけに先行き不透明だ、という話である。勝間本は微妙なニュアンスではあるが「金融資本主義」というスキームを疑っていない。
帰りの電車で、役人Kとパトリオティズムに満ちた会話をして帰宅。