三隅研次『大魔神怒る』(1966)

(79分・35mm・カラー)シリーズ第2作。火口湖の中央にまつられた守護神が、人々を隣国の悪領主から守るため立ち上がる。回を重ねるごとに手が込んでゆくブルーバック合成の水準の高さが話題を集めた。本作では、湖が二つに割れて大魔神が登場する場面が最大の見せ場となっている。
'66(大映)(監)三隅研次(脚)吉田哲郎(撮)森田富士郎(美)内藤昭(音)伊福部昭(特撮監督)黒田義之(特撮合成)田中貞造(出)本郷功次郎藤村志保、丸井太郎、北城寿太郎、内田朝雄、橋本力(FC)

大魔神』が素晴らしかったので、勢いづいて観てしまったのだが、虚無的な映像美が異界の魅力に通じており、これも素晴らしい作品だった。高い岬で鳴る鐘の音、海に浮かぶ小島、荘厳で神秘的な洞窟、それぞれの設定が素晴らしい。善玉の領主と民衆とが耐え忍んだすえ大魔神がやってくるというのは、任侠映画と同じ物語構造であるが、マグマの塊のような怒りの表現は、美意識に流れる任侠物とは異なり、別種のカタルシスに観客を導く。
火あぶりにされる藤村志保が、熱してゆらめく空気のなかで祈りを捧げるシーン、悪玉領主が因果めいて死んでいくシーンが素晴らしい。城がかなりトリッキーな作りになっており、忍者的な楽しさも味わえる。ラスト近くで、大魔神が水のなかに佇んでいるのを藤村志保が小走りに近づいていく、水際のショットが素晴らしかった。水の表現が素晴らしい。
参考までにこれ