ショーン・ペン『イントゥ・ザ・ワイルド』(2007)

INTO THE WILD 2時間28分 出演 エミール・ハーシュハル・ホルブルックキャサリン・キーナー http://intothewild.jp/
アラスカの荒野に捨てられたバスの中で、謎の死を遂げた若者の足跡を追った、ジョン・クラカワーのノンフィクション“荒野へ”。遺族より10年の歳月をかけ映画化権を獲得した監督ショーン・ペンの“生きる”意味を問いかける渾身のドラマ!! (GH)

ジョージア州の大学を優秀な成績で卒業した若者が、ソローやトルストイにつよくあこがれ、ヒッピーになって家出する。砂漠地帯を横切り、アラスカで念願の荒野生活を始めるが、獲物の動物が乏しくなった頃、毒性のある根菜類を食べて死亡する。長いけど、なかなか面白い。
主人公のあっけない自滅ぶりに愕然としつつ、一方では、「やっぱりアメリカ人って面白いよなぁ」と感心しきりだった。文明を忌み嫌い(主人公は金を寄付し紙幣を焼く)、自然との精神的交流を夢見つつ「森の生活」に入るのは、(ソローに典型的なように)アメリカ流個人主義のひとつのパターンであるが、しかし日本人の感じ方からすると、「おいおい、銃は持っていくのかよ」と思わざるをえない。「銃でパンパン動物を撃って、これで文明から離脱したことになるんだろうか?」と素朴に疑問に思うが、自然の中に入るからといって、アニミズムの感覚とは違うわけだ。propertyの不可侵性。
実際、アニミズムの感覚さえあれば、あんなに軽率に毒性の疑われる根菜を食ったりしないだろう。アンデス地方みたいにチューニョ風にしてみるとか、ちょっとずつ食ってみるとか、食肉に依存しすぎない生活設計を立てるべきだったのではないか?ヘラジカの処理に手こずって、肉に大量のウジ虫が湧いていたが、あれだってもう少し上手くできるだろう。
主人公がヒッピーになった原因には、両親との精神的不和もあるようだったが、これはちょっと意外な感じがした。アメリカ人って、self-relianceを重んじるから、親の抑圧なんかからは比較的自由なんじゃないかと思っていた。