アメリカ人

コンパクトに知見がまとめられていて、とても良い本だった。レーガノミックス以降のエスタブリッシュメントのスキーム構築、anti-intellectualismを力強く肯定するエヴァンジェリカル、産業をスキップして(資)軍学を結合させるシンクタンクの問題性など。下記引用は、第7章「それでもなぜアメリカ社会は「心地よい」のか?」から。「He has lots of money. He must be doing something right.」

アメリカ社会は全ての人に対して経済的に成功することを期待し、その期待に応えてはじめて責任を果たしたことになり、人間としての価値を証明できる。それがなかったら、何を言っても大した意味はない。成功を測る基準は、生まれた家庭と同程度の経済水準を達成すればOK、それよりも低ければダメ、社会的に突出した水準に達したら尊敬と賞賛を浴びる。この責任と評価基準は、筆者が生まれ育った日本の環境とは全く異質のもので、それに気づくまでには相当の時間が掛かった。/日本にいた時は、互いに経済的な成功はあまり期待していなかったし、重視もしていなかった。それよりも礼儀正しく思慮深く、周囲に迷惑を掛けず、周囲の人の役に立つ、という種類のことを期待されていた。経済的な責任は、それに必要な範囲での一要素に過ぎなかった。/……アメリカ社会では、いくら自由で何をしてもいいとはいえ、経済的に自立しなければオチこぼれる。この責任と切迫感が、良くも悪くも行動を抑制する一方で、常軌を逸脱して極端に走らせる力にもなる。……莫大な富を蓄積した人々に対しても、羨望や賞賛こそあれ、批判や嫉妬は他国に比べればはるかに小さい。嫉妬は自分の無能や諦めを認める恥ずべき行為だし、根拠のない批判はフェアな行為ではないとされている。(279-280)

超・格差社会アメリカの真実 (文春文庫)

超・格差社会アメリカの真実 (文春文庫)