グレゴリー・ナヴァ『ボーダータウン 報道されない殺人者』(2007)

BORDERTOWN 1時間52分 出演 ジェニファー・ロペスアントニオ・バンデラス、マヤ・ザパタ http://www.bordertown.jp/
メキシコ・フアレスのマキラドーラ企業で働く若い女性たち。93年以降、5000人以上の女性が強姦、殺害されたという、その真相とは?アメリカのエリート女性記者が暴く、社会の矛盾。

映画のなかのメキシコの治安が最悪すぎて、ほんまかいな、と疑ってしまうほどだった。マキラドーラの工場で働く女の子たちは、どんどんレイプされて殺されていくのだが、企業や政界とつるんでいる警察はまったく動こうとせず、巨悪を暴こうとするジェニファー・ロペスも見えない壁にはねのけられてしまう。最初に「これは事実にインスパイアされたフィクションです」という字幕が出るので、何ほどかは真実に触れているはずなのだが、悪の権力者達があまりにも図式的に示されており、かえって嘘くさい感じが拭えなかった。実際、警察が権力と癒着している説明に関して、シナリオには弱点があると思う。
とはいえ、ほとんどホラー映画そのものと言ってよいワンシーンがあり、これには一見の価値がある。死体、死体、死体。こんな状況はぜったいにお断り死体(←ギャグ)。短いショットが素早く重ねられ、心理的圧迫感すら覚える緊張感溢れる表現も素晴らしい。色彩豊かな独特の映像美で、メキシコのエキゾチックな感じもよく伝わってきた。全体としては良い作品。
それにしてもメキシコの国境地帯はいったいどうなってしまっているのだろうか?先住民の女の子はアジア人に似ている。