稲垣浩『風林火山』(1969)

seiwa2005-04-28

(165分・35mm・カラー)映画産業の衰退で時代劇が作りにくい時期に、稲垣が永年熱望していた原作の映画化を実現した超大作。武田軍の名参謀、山本勘助の波乱万丈の人生を描いた本作は、三船プロにとって前年の石原プロとの共作『黒部の太陽』による大成功に続くもので、3大スター出演の豪華版となった。
’69(三船プロ)(原)井上靖(脚)橋本忍国弘威雄(撮)山田一夫(美)植田寛(音)佐藤勝(出)三船敏郎佐久間良子中村錦之助石原裕次郎、中村賀津雄、中村梅之助田村正和中村勘九郎緒形拳大空真弓春川ますみ久我美子中村翫右衛門月形龍之介志村喬南原宏治平田昭彦、土屋嘉男、香川良介、清水将夫、戸上城太郎

今日の出来事。大学で雑用を六つばかり済ませる。それでも二つほどやり残したのだが、いざフィルムセンターへ。見た映画は、稲垣浩監督『風林火山』(1969年、165分)。粗筋を説明するのが大変なので、双葉十三郎氏の解説。

風林火山といっても武田信玄が主人公ではなく彼につかえた軍師山本勘助三船敏郎)の物語。手管を尽くし信玄(中村錦之助、後の萬屋錦之助)の軍師となった勘助は、非常なまでの権謀でその地位を固め、ついに上杉謙信石原裕次郎)との決戦を迎える。(中略)比較的史実に忠実に稲垣浩監督がごくオーソドックスに描いた戦国絵巻。三船、中村、石原の三大スターの共演はこの作品ぐらいだろう。それを捌いた稲垣監督は華やかで馬力がありました。

このとおりなのだが、私は、冒頭の数分の、間然とするところのない構成美にいたく感心した。本体はカラー映画なのだが、白色がかったモノクロ映像で始まり、それが醸し出す緊張感が素晴らしい。強い風が吹く竹藪のなかを、薄気味悪い素浪人が歩いていて、民家の戸の向こうに隠れている山本勘助に金品をせびりだす。勘助はこの素浪人を謀略にはめ込み、武田家への仕官に成功するのだが、ここに始まる謀略の連鎖が、勘助や佐久間良子演じる諏訪姫の人生を、歴史の翻弄へと巻き込ませていくことになるのである。
さて、映画終了後、私は、数時間前に古本屋で目星を付けておいた本を買うことを決心し、本屋に戻ったのだが、悪い予感が的中し、すでに売れていたあとだった。ポランニー『大転換』(東洋経済)。古本屋で他人に欲しい本を奪われたと気づくときほど、絶望してしまう瞬間はない。ましてや、八重洲ブックセンターで、ポランニー絶版・在庫なしの情報まで確認していたあとだったから、悔しさがいや増してくる。だって、たったの1000円だったんだぞ。ちょっと汚れていたから日和ってしまったのだが、こういう日和り方をすると、あとで自分の決断力の鈍さをとことん呪うことになる。