とりあえず20冊
今年は「人類学的観点から近代社会の認識枠組を捉え返すことの意味」「グローバリズムのなかで社民的枠組を追求していく方向性」について認識を深めることになった。そのあいまに逃避的に雑書を読んで、「日本社会は民主主義原理にくわえて立憲主義原理を保持していること」「民主主義原理の日本的脆弱性の背景には陽明学的メンタリティー(顕密二元論的といってもよい)が存在すること」に思いを巡らせた。また気が狂いそうになったときは夢野久作や鶴見俊輔やトルストイのような気違いに感情移入し、最後はぴりっと大人風「社交する人間」で決めたい感じだったが、結局自分は、小林信彦とか岡崎次郎とかなんとなく負けてしまう人間が好きなのだと、まあそこらへんの循環をぐるぐる回った感じであった。
岡崎次郎『マルクスに凭れて六十年』(青土社)
苅部直『丸山眞男―リベラリストの肖像』(岩波新書)
小島毅『近代日本の陽明学』(講談社選書メチエ)
飛鳥井雅道『明治大帝』(講談社学術文庫)
長谷部・杉田『これが憲法だ!』(朝日新書)
小林信彦『夢の砦』(新潮文庫)
小林信彦『うらなり』(文芸春秋)
小林信彦『日本の喜劇人』(新潮文庫)
古谷実『シガテラ』(講談社・全六巻)
川上弘美『真鶴』(文藝春秋)
トルストイ『イワン・イリイチの死』(光文社)
ラブレー(宮下志朗訳)『ガルガンチュア』(ちくま文庫)
柴田三千雄『フランス史10講』(岩波新書)
梅田望夫『ウェブ進化論』(ちくま新書)
鶴見俊輔『期待と回想(上巻)』(晶文社)
鶴見俊輔『夢野久作・迷宮の住人』(双葉文庫)
池内恵『書物の運命』(文藝春秋)
山崎正和『社交する人間』(中公文庫)
岡田暁生『西洋音楽史』(中公新書)
穂坂邦夫『教育委員会廃止論』(弘文堂)
このラインナップだけを見ていたら、それなりに充実して過ごした一年だったようにも思えるが、「それは錯覚だろうな」という感じもつよく残っている。それにしても、性格がもろに出ているなあ。