本と音楽の紹介

許光俊『オレのクラシック』(青弓社)、やはり好き。弟が結婚式でトスカニーニのBGMをかけた逸話に笑った。中野翠『会いたかった人、曲者天国』(文春文庫)は必読。淡島寒月の父、椿岳の辞世の句が、「今まではさまざまの事してみたが 死んでみるのはこれが初めて」。森銑三『思い出すことども』(中公文庫)も、肩肘張らない名著。友人だった柴田宵曲との付き合いが楽しく、先生として交流のあった井上通泰にも関心が引かれる。母への想いに泣ける。半月ほど前に読んだ池島信平『歴史好き』(中公文庫)に出てくる菊池寛も良かったが、菊池の人となりについては稲垣浩『日本映画の若き日々』(中公文庫)でも親しく描かれている。昨晩はしりあがり寿『マンガ入門』を読んで、自分の中のケダモノを育てつつ、「世界が汚く見える時も、そんなはてしないウンチの山の中に、ダイヤモンドが一粒埋まってることを、ボクは信じてきたような気がします」とする創作態度に共感を覚えた(223−224)。NHKで浦沢直樹の特集があって、マンガ家に共感しやすい気分になっている。あと先月は宮台眞司『interviews』(世界書院)を読んで、良くも悪くもこの人の個人的資質が90年代とともにあったことを興味深く振り返った。好著。なお中野本に出てきた『奇人でけっこう――夫・左卜全』(三ヶ島糸著、文化出版局)はぜひ読んでみたい。
音楽も少し。此処の所クラシック回帰の傾向があり、チェリビダッケ「ロサ曲ミサ」、テンシュテットマーラー三番・六番」などの定番を聴きつつ、今日はポリーニベームウィーンフィルモーツァルト、ピアノコンチェルト23番/ベートーベン、皇帝」を購入した。ベートーベンには少しエキゾチックな音色を感じる。モーツァルトは、まさにこれぞ、といった出来。神経の粗雑な人間にはこの美感は味わえないであろうよ、と思う。カール・ベームウィーンフィル

Piano Cto 23 / Piano Cto 5

Piano Cto 23 / Piano Cto 5

音楽をまるで聴かなかった大学1、2年の頃、ポリーニショパンエチュード」だけはやたらと聴いていたことを懐かしく思い出す。ショパンの自己感傷とポリーニの精緻な猛々しさに魅かれていたといえば、こじつけに過ぎるか。でも、そんなだったようにも思う。