エリツィン

というわけで、黒木和雄監督作品も佐藤忠男の本も非常に面白いと思います。佐藤本はとくにATGに関して当事者ならではの深い理解が窺えます。おすすめです。

黒木和雄とその時代

黒木和雄とその時代

ところで「BSドキュメンタリー・エリツィン前大統領死去関連 『証言でつづる現代史“こうしてソ連邦は崩壊した”』8月の“クーデター”/森の中の静かな闘い」を視聴したのですが、思ったほどは感心しませんでした。分かりにくい。私の理解では、1991年8月20日締結予定の条約に抵抗する共産党保守派の行動を利用して、ゴルバチョフの権力を完全に殺ぐかたちで、エリツィンが政治的術策をめぐらせた、という風にまとめられるように思います。共産党保守派は本来、共産党の権力を実質的に形骸化する条約に警戒してゴルバチョフに再考を促そうとしただけであったのに、結果的にそれをエリツィンに利用され、エリツィンゴルバチョフに政治的指導力の無さを糾弾する口実を与えた、それが連邦権力の壊滅的打撃へとつながってしまった、ということでしょう*1。8月20日の条約がそのまま締結されたとき、エリツィンを始めとする共和国各国とソビエト共産党との関係性はどうなっていたのだろうか、と考えることは、面白い思考実験になりますね。
そのエリツィンも、(ロストロポーヴィッチも)死んでしまいました。

*1:番組中ではそういう説明は全然されていなかったので、あくまで私の理解。