黒木和雄『浪人街』(1990)

(117分・35mm・カラー)幻の傑作と言われる1928年の『浪人街・第一話 美しき獲物』を監督したマキノ雅広(正博)監督の支持を得て、黒木がリメイクにあたった時代劇の娯楽作。マキノ的なシャープな演出とは異なるが、長年の望みだった笠原和夫に脚本を依頼、居酒屋を舞台にした「グランド・ホテル」形式の重厚な作品が完成した。ラストの立ち回りでは巨匠キャメラマン宮川一夫がBキャメラを回している。
’90(山田洋行ライトヴィジョン=松竹)(原)山上伊太郎(脚)笠原和夫(撮)高岩仁(美)内藤昭(音)松村禎三(出)原田芳雄樋口可南子石橋蓮司杉田かおる伊佐山ひろ子絵沢萠子賀川雪絵、中村たつ、紅萬子、藤崎卓也、天本英世、水島道太郎、中尾彬佐藤慶長門裕之田中邦衛勝新太郎

「大スターの勝新太郎をはじめ、原田芳雄田中邦衛石橋蓮司などなど、まことに重厚かつ老練な俳優たちがこの浪人たちを演じている。それで悪くはないのだが、B級作品らしい良さがなく、いささか重厚でありすぎるのではないかと思う。残念ながら成功とは言えない」(167)。この佐藤忠男評はけっこう当たっている。樋口可南子のタンカも素晴らしいし、総監修:マキノ雅弘、脚本:笠原和夫、特別撮影:宮川一夫なども、めちゃくちゃ豪華。最後の大殺陣に至るまでのじらしも良かった。けれど、黒木和雄の「きまじめさ」がこの方向性で生かされるのかというと、必ずしもそうとはいえない。勝新などの俳優陣の魅力からしても観て損のない作品だが、佐藤氏の評価にも一理ある。