黒木和雄『わが愛北海道』(1962)

(49分・16mm・カラー)北海道の風土と基幹産業を紹介するPR作品だが、アラン・レネの『二十四時間の情事』(1959年)に刺激されていた黒木は、一組の男女に旅をさせるという構成にしてそのドラマ志向を実現させた。映画のトップに“ニシン御殿”での全裸のラブシーンを撮影したが、会社によって即座にカットされたという。
’62(岩波映画製作所)(製)小口禎三、坊野貞男(脚)黒木和雄清水邦夫(撮)清水一彦、渡辺重治(録)久保田幸雄(音)松村禎三(解)木村功(出)及川久美子、関口正幸

大変な秀作だと思った。佐藤忠男黒木和雄とその時代』より。

…札幌、函館、小樽、その他の都市が、表通りの景観より裏通りの風情に力点を置いて描かれるし、鰊漁の番屋や近海漁場への港や、湿地帯、農地、牧場、工場、市場、その他が、主としてそこで働く人々の姿を入れ込んで生き生きと描かれている。カメラは人々の活気と響きあうようにしてよく動くし、工場で働く女性に呼びかけるようなナレーションにも明るく弾むような力がある。…たぶんに主観的な作り方であるにしても、これはこの時代の北海道に日本人がどんな夢を託していたかを鮮やかにうかびあがらせた、いわば気持ちの記録として、時がたてばたつほど、追憶の北海道として価値が高まってゆく秀作だと思う。(47)

共感的なキャメラの視点にうっとりと見入った。女の人が非常に美しく撮られていて、ラブシーンがカットされたというのは、大変残念に思う。素晴らしい作品。