アルフレッド・ヒッチコック『レベッカ』(1940)

REBECCA

(129分・35mm・白黒)大恋愛の末に後妻として富豪の家に嫁いだ女が、その館に先妻レベッカの影を色濃く感じ、そして不気味な家政婦の存在に言い知れぬ恐怖を覚える。ヒッチコックがハリウッドに移って初めて撮った作品だが、英国上流階級の陰鬱な雰囲気をそこかしこに漂わせる。
’40(セルズニック・プロ)(監)アルフレッド・ヒッチコック(原)ダフネ・デュ・モーリエ(脚)ロバート・E・シャーウッド(撮)ジョージ・バーンズ(美)ラウル・ウィーラー(音)フランツ・ワックスマン(出)ローレンス・オリヴィエ、ジョーン・フォンテーン、ジョージ・サンダース、ジュディス・アンダーソン、レオ・G・キャロル、ナイジェル・ブルース、レジナルド・デニ、セシル・オーブリー・スミス

いちどビデオで観た事があるが、スクリーン第一主義者なので再見。二度目にしてよくわかることは、ジョーン・フォンテーンのマンガ的なまでに張り詰めた緊張の表情、レベッカの影に怯えるシーンでダレが生じるストーリー展開、などの点。
『定本 ヒッチコック 映画術 トリュフォー』の該当部分が面白い。トリュフォーってやっぱり見巧者だなぁ、的確で凄いなぁと感心しますね。いくつか引用。
H「ふしぎなことに、年月に耐えられた映画なんだな。わたしにもなぜかよくわからない。」T「・・・あなたは、この人物間の葛藤だけからなる心理ドラマにサスペンスの要素を意識的に持ち込んでみた。この実験がこのあとのあなたの作品に大きなプラスになってあらわれてくるのではないかと思うのです。・・・」T「・・・蒼ざめて死んだように動かない顔と恐怖をよびおこすもうひとつの顔、あるいはまた被害者と加害者を、同じひとつの構図のなかにとらえるといったような視覚的な図式。」H「ダンヴァース夫人は動きまわらずに、いつもそこに立っているというイメージにした。・・・いつ、どこから出てくるのかわからないので、ひどくおびえている。ふりむくと、もうそこに夫人がいる、というこわさ。・・・」H「…『レベッカ』の屋敷のある場所が地理的にまったくわからないことに気がついたかね?これはもちろん意識的に描いた。ただポツンと遠くはなれた場所にある。『鳥』の家の場合も同じように孤絶した感じにした。・・・」(119−121)