石川文康『カント入門』(ちくま新書)を買い直して読んでみたのだが、これがなかなかの良書。アンチノミー論を中心とする『純粋理性批判』の解説。ただ、「悟性に固有なア・プリオリ概念」たる「カテゴリー」を巡ってその客観的妥当性を跡付ける試みは、新書で読むにはやはり大変。「ア・プリオリ」なカテゴリーが「生得的」でもなく「獲得的」でもなく「根源的獲得」の領域に属する、というのは、精妙すぎて理解がやや難しい。
勉強の合間にマサッチの『不可能性の時代』。あまりにも異様な内容。一般人は次のような文章を読んでどう感じるのだろうか?

このように、高度成長期の「理想」は、二つの焦点をめぐって展開する。マイホームと土地である。そうであるとすれば、「アメリカ」という仮面を被っている超越的な他者の真の姿がはっきりしてくる。それは何か。「資本」だ。資本は、一方では、「マイホーム」で消費すべき理想の商品を与え、他方では、「土地」をどこまでも抽象化していく。(41)

異様だが、何らかの深みに触れている感じがするので、かなり面白く読めてしまうのは確か。(「超越的な他者としての「アメリカ」への信頼」(34)の歴史記述に違和感あり。)