衣笠貞之助『新・平家物語 義仲をめぐる三人の女』(1956)

(119分・35mm・カラー)大映が掲げる大作主義の下で、吉川英治の「新・平家物語」を原作として製作されたシリーズの一つ。平清盛の青年期を描いた溝口の『新・平家物語』(1955年)に続く本作は、悲劇の武将・木曽義仲を中心に描いており、義仲の妻(京)、女兵(山本)、敵方の姫(高峰)とのエピソードを交えている。
'56(大映京都)(監)(脚)衣笠貞之助(出)長谷川一夫(木曽次郎義仲)(原)吉川英治(脚)成澤昌茂、辻久一(撮)杉山公平(美)柴田篤二(音)齊藤一郎(出)京マチ子山本富士子高峰秀子大河内傳次郎、黒川彌太郎、柳永二郎進藤英太郎志村喬、夏目俊二、杉山昌三九、細川俊夫、山路義人、羅門光三郎、見明凡太郎、高堂國典

良く言えば悠然、悪く言えば退屈。高峰秀子が見たくて行ったけど、衣笠貞之助の映画ってこんな感じだよね。
それにしても木曽義仲は哀れである。作中、朝廷と結ぶ頼朝が悪く描かれているのと並行して、直情型の義仲が不器用である様子も描写されている。気持ちの揺れを演じた長谷川一夫は見事だったが、史実はややこれとは異なるようである。
当知行の安堵という形で主従関係を構築した頼朝とは異なり、京都で一大勢力を築いた義仲は、「主従関係を規定する理論を確立できぬまま、朝廷対策に失敗し、平家の水軍に敗北し、自軍の結束を保ちきれなくなって衰弱した」(本郷和人『武士から王へ』P162)。後白河法皇は義仲と対立し、頼朝に宣旨を下したが、その後、義経を立てた法皇を頼朝は一蹴し、1185年、守護・地頭の設置により鎌倉幕府を強化していく(本郷説では幕府成立は1180年)。
どっちみち、義仲は蚊帳の外なわけだが。山本富士子が蛙をつかむ萌え。